≒舟越桂@群馬県立近代美術館

≒舟越桂 | near equal funakoshi katsura
http://brobanguide.jp/movie/mv200411150000.html
舟越さんの作品は一体手元に置いて毎日拝みたい作品です。今は亡き*1京都書院から95年彼のカレンダーが出たのですが今も褪色していますが持ってます。
『目はわざと斜視ぎみにしてある。遠くを見る目にしている。哲学者の目というか、砂漠の民というか、マラソ選手の目の様な。』一枚そのカレンダーが掛かっているだけで気持ちがとても伸びやかになった不思議が今もあります。

10年程前東京藝術大学舟越桂さんの*2講演を聞いたことがあります。一番最初に彫刻家としてロシアの教会のマリア像を制作したスライドを見せてもらったのですが、その印象に近い安らいだ雰囲気の方でした。水のゆくえ―舟越桂作品集
が、今日制作現場の映像を見て、白鳥の水面下だと思った。楠木をチェーンソウで荒削る。太いノミをガツガツ当てる。電動マッサージ機を改良したサンダーが細かい部分も造形できるといいながら、バンバン粉塵をあげる。

  • リアルとリアリティーは違う
    撮影という事で一度モデルさんに来てもらっていたが、基本的に特定の個人のモデルはいない。けれど写真や頭蓋骨模型を元にリアリティーを追求する。デッサンは描くけれど新たな気持ちで木に向かう。私はここまで独自のスタイルができた人はサササと手を滑らせて終りなのだど思っていたらしい。探求的な木炭デッサンの線や、制作途中も『目が慣れてしまうから』と大理石の眼球を嵌め込んでから像に目隠しをして表情を厳しく問う。頭蓋骨模型をモデリングして写実を何処までも追及する姿に愕然とするほど。舟越桂全版画1987-2002
    モナリザのモデルは誰か”なんて謎はこれをみたらいっきに解けるだろう。モデルは誰かという質問に『おかあさんかな』と回答していた舟越さん。きっとそうゆうことなんだと思う。物凄くリアルなのに現実には何処にも無い姿。
  • お前なんかに言われてもヘーキだよ
    先日の荒木経惟も奥さんを上半身裸でモデルにしていたが舟越さんも同様。現在の作風、上半身楠木丸彫り着彩の第一号は妻。芸術家の奥さんの宿命か*3。着彩の作品『スーツ姿の男』を初めて発表したとき友人に『気持ち悪い』と酷評されたけれど、『自分自身に確信があったから大丈夫だと思った。木彫で白木はここ数百年の風潮、昔はギリシャ彫刻も日本の仏像も極彩色が施してあったんだから。』勿論研究も怠っていないのです。日本の秘仏 (コロナ・ブックス)
  • 神は細部に宿る
    『こうしてこうなるというやり方は無い』『途中で自分が変なもの作ってるんじゃないかと不安になる』ある、心を追い求めて形を作る。一センチの補修を行ったり、本来の使用目的以外に酷使される見慣れた道具。友達に借りた仏像の作り方の本でも象嵌を楔だけで留めてなくて、漆を接着材代わりに塗ってる。』添え木の見えない部分も奇麗に蹴って大理石に鉛筆やクレヨンで黒目を書き込んでコーティングした眼球を嵌め込む。
    ジェッソを塗り、緩く溶いた油絵の具で着彩していた。『仕上げは前はクレヨンの粉をはたいてたんだけど、最近は丁寧に描く様にしている。その方が“強い”から』『ここまで拘れるのは*4父の制作風景をみているから、この家に生まれてよかったと思ってます。』遠くからの声―舟越桂作品集
  • 偶然を引き寄せることが現実を生きること
    体の前後が逆だったのを面白いのでそのままにしたり。目の前で起こった現象を受け取るアンテナを常に張って、自分に繋げる柔軟さ。現代の神の姿が彫れる人の姿勢かも。
  • 口笛吹いて鼻の穴
    制作中、舟越さんは口笛を吹く。完成したと思った頭部、『あっ、鼻の穴彫るの忘れた。』ゴリゴリ。
    『制作はとにかく続けること。駄目なときもあるけど続ける。オリジナリティーなんてその後のこと。人の作品からも刺激は受けるけど、制作することで新たな発見があってそれが次へ続く。発見が無かったら楽しくない。』
  • スケーターなんだぜい、舟越桂は。
    殆ど状況説明の言葉の無いドキュメント映画でした。助手のことも、場面がどこだとか。まあなんとなく推察はできる。最期モノクロの写真が一枚、8分丈ズボンを履いた躯体の良い男の子がスケートボードに乗っている。
    古いスケボーに舟越さんが倒立して乗り道の向こうへ進んで見えなくなって作品はおしまい。

*1:http://kshoin.hp.infoseek.co.jp/おお?!復活しているみたいですよ!

*2:わりと前の方でうつらうつらしてしまっていたら、もっとグーグー寝てる熊みたいな人もいた

*3:そういえば、素っ裸にスライド投影されて写真に撮られてた友達もいました…。

*4:舟越保武