「ゲルハルト・リヒター−絵画の彼方へ−」@川村記念美術館

DIC株式会社
この展覧会の図録DVDでリヒター自身が言っている「絵画は古い様式だ」と。

  • でもリヒターは絵画を描く。「絵画になにができるかを試すこと。今日自分はどのように、何を描けるのか。いいかえれば、今何がおこっているのかについて、自分自身のために一つの映像をつくとうとしつづけることです。」彼はいくつかのスタイルを反芻して制作を続ける。実際の事件の写真を拡大して油絵で描くスタイル、熱く色彩が重ねられた抽象画、ガラスの映りこみを利用したオブジェに近い作品。それらは独立しつつ、ケルンの空爆写真絵画には写りみを利用したガラスが用いられたり、抽象に見る勢いのある筆さばきが、写真に見まごう静かな画面に見られたり、織り合わせられている。
  • しかし「自分のやっていることはわからない。わかってはいけないのです。」
    Daydream Nationそういい、あとの言語解説は任せるとしている彼の作品は「コンセプトが明解で、アイデアも卓越している。」とキュレータに語られる。
  • コンセプトやなんやらはともあれ、雨雲みたいなグレイの色調が深みがあってただただ美しかった。マーク・ロスコーのコレクションで有名なこの館にあっては、具象も描きつつそこにある彼の抽象的な普遍の深さが際立つ。
  • 流動的な映像が目まぐるしく過ぎていく今日、リヒターの作品の前に立ち止まり、逆に足が揺るぐ感覚に陥った。