「闇の中の光〜ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの世界」 

前日、新日曜美術館で特集されていました。
『随分暗い絵だな』という第一印象は、三十年戦争の戦禍ロレーヌ地方で生まれた作品だからだそう。同時代を生きた版画家は当時の陰惨な事件をジャーナリズムの見地で作品に残す。処刑された人々が大きな木に鈴生りに釣る下げられる。
方や、卓越した写実表現のラ・トゥールは、日常を見つめつつそこに小さいけれど普遍的な幸せを見つけ表現する。
一連の聖者シリーズも聖人達の手は骨太で爪は黒く、大地を開拓する者として描かれているそう。
Catalogue of the Van Gogh Museum's Collection of Japanese Prints『蚤をとる女』の前で、『人間に蚤が付くの〜?やーねー。』という感想をもらしていた人がいたが、蚤が寄生するような貧しい生活の中でも、女の人が身づくろいをする。人間の美しくありたいという本能を過酷な時代の中にでも画家は見いだしたのだと思う。
ロウソクの明かりでドラマチックに構成された画面は、精緻な写実にみえて、その光の当り方は非現実的で作者の巧みな絵画表現によるものだそう。
後半はその明かりを一心に燈すほっぺたを膨らませた人々が沢山描かれていた。
人の傍らに表現された小動物の目はあくまでも無垢で、ラ・トゥールの闇はそんな真っ黒だった。